乗馬における扶助とは?馬に自分の意思を上手に伝える方法を解説

乗馬における扶助とは?馬に自分の意思を上手に伝える方法を解説

乗馬を楽しむための基本となるのが、扶助(ふじょ)です。扶助というのは、馬に騎乗者の意思を伝えるための動きや合図のことを指します。馬と心を通わせて乗馬を楽しむためには、扶助について知り、馬への理解を深めることが欠かせません。そこで今回は、扶助の種類や効果的な使い方についてご紹介します。

乗馬における扶助とは?

ここでは、乗馬における扶助について、その意味や種類などを解説します。

扶助の本来の意味

扶助というのは、騎乗者の意思を馬に伝えるためにおこなうものです。英語では「aid」という言葉が使われており、支援・支持という意味があります。つまり、命令や指示という意味ではなく、騎乗者の意思を馬が理解するのを助けたり支援したりするものといえるでしょう。

扶助を出すタイミング

扶助を出すタイミングとして最適なのは、馬が要求を受け入れられる状態にあるときです。つまり、興奮状態や、集中力が切れている状態、不安やパニックを起こしている状態のときに扶助を出しても、効果を得ることが難しくなります。また、扶助を出して、馬の反応があれば、その時点で扶助を出すのをすぐにやめるようにしましょう。

扶助の種類

扶助の中でも代表的なものは、脚を使って馬に意思を伝える脚扶助ですが、そのほかにも拳・坐骨・副扶助などが挙げられます。脚扶助とは、ふくらはぎで馬の腹の部分を圧迫し、前進の指示を伝えるものです。

さらに、拳というのは手綱使って左右に曲がったり、一時停止したりという指示を伝える方法です。坐骨扶助というのは、坐骨で鞍に与える体重をコントロールするやり方です。体重を左右に移動させて旋回を促したり、坐骨に体重をかけて前進の指示を与えたりすることが可能です。

座骨扶助という表現は誤解を生みますので訂正させて頂きます。騎座扶助と表現してほしいです。座骨は接点が点ですが騎座は鞍に接する膝から内転筋、鼠径部、座骨を含めたシートに触れる面全体を指します。座骨の頂点一点に負重してしまうと重心の移動もバランスの変化も加えることが出来ません。騎座全体に均等に負重したり前方に負重したり後方に負重したり左右にバランスを切り替えることで、合図によって馬が動こうとする動きを助けることになります。前方騎座は馬が前方に移動することを助けます。後方への負重は馬が後方へ移ろうとすることを助けます。左後方、右後方の重心転移は馬の方向転換を助けます。上下方向は馬の弾発的な動きを助けることになります。

拳や脚の扶助と騎座の扶助が一致すれば馬は騎乗者の意思を理解することが出来ますが、あべこべの不一致な扶助を送ると馬は混乱します。例えば拳を強く引いて馬を止めようとしているのに、強く引いた腕の力で上体が前方にバランスを崩し、前方騎座になってしまう場合は、馬は口への痛みと騎乗者の重みが前方にかぶさってくることで、さらに興奮して加速していきます。拳・脚・副扶助と騎座の重心転移による扶助が一致することが重要です。天城ホースビレッジではこのような原理原則を理解しやすく丁寧に何度でも説明と実践を踏まえてレッスンを行います。

副扶助の種類

副扶助とは、扶助を手助けするために使用する舌鼓や音声、ムチ、拍車などを指します。舌鼓とは、舌を使って音を発することで、馬の注意をひく方法です。「オーラオーラ」などと声をかける音声は、馬の気持ちを静めるときに使用されます。

ムチは、肩部分や馬の大腿部にムチをあてることで、扶助をさらに強化するための扶助方法です。拍車は、騎乗者の靴に装着されるもので、脚扶助を強化するという目的があります。

間違った扶助

馬にとってしっかりと意思が伝わらないものは、扶助とは呼べません。たとえば、絶え間なくかかとで蹴る、激しく手綱を動かす、強い力でムチを叩く、怒鳴る、馬を驚かせるなどは、すべて間違った扶助です。

脚扶助を効果的に使用しよう

扶助の中でも、もっとも馬に意思を伝えやすいのが、脚で伝える方法です。ここでは脚扶助に注目して、その種類や使い方をご紹介します。

脚扶助の種類

脚扶助と一口にいっても、さまざまな種類があり、馬の状態や反応に合わせて使いわける必要があります。たとえば、反応がよい馬の場合には、ふくらはぎで圧迫することで指示が伝わります。馬の腹にふくらはぎをつけ、脚でお腹を内側に押し込むようなイメージでおこないましょう。馬によって反応が異なるため、必ず弱めの圧迫からはじめるようにしてください。

ふくらはぎで圧迫しても反応がない場合には、かかとを上にあげたり、かかとで蹴ったりという方法を使用します。かかとを上にあげるというのは、かかとを少しだけ上にあげて、馬の腹を刺激する方法です。かかとで蹴る場合には、つま先を外側に向けて、かかとを馬の腹にあてます。強い指示になるため、様子をみながら使用することが大切です。

扶助や合図というと、力を加えた時に反応してくれないと、伝わっていないと感じてしまいますが、馬の気持ちになって考えてみましょう。入力された瞬間は馬体にプレッシャーやストレスがかかります。この時は「動け!反応しろ!」と言われていることはわかっていても、実際は動きにくいし反応しにくい瞬間です。

また、動きに現れるまでタイムラグがあるのも理解できると思います。扶助を使うときに大切なのは入力のあとの脱力です。プレッシャー&リリースと言う言葉もありますが、入力と脱力をセットで使い、力の落差をはっきりとすることで馬が感じて反応するまでの一連の動作を助けることになります。ですから入力の時期は伝える時期。脱力の時期は馬と一緒に動く時期(馬の動きについて行く、邪魔をしないようにする)と理解してください。

騎乗者目線の話ををすると、入力しているときは体中に力みが生じて柔らかい動きが出来ませんし、馬の様子を感じ取る余裕もありません。入力した直後に脱力する習慣がついていると馬がどのような反応をしているか、自分がどのような状態になっているかを騎乗者自身が感じ取ることができます。

この、騎乗者自身が感じ取るということが重要で感じ取れる人は自分で修正できますが感じ取る余裕がない人は指導員等に指摘を受けても実感することが出来ません。
ですから、一歩一歩の中で完全に脱力する瞬間をほんの一瞬作れるように意識すると急激に上達することが可能です。

脚扶助をおこなう位置

脚扶助をおこなう上で重要になるのが、その位置についてです。なぜなら、馬の腹といっても広範囲であり、刺激を与える場所によって反応が異なるからです。基本的の位置としては、腹帯の少し後ろを目安にするとよいでしょう。

前進の合図を出したい場合には腹帯の少し後ろ、駈歩の合図を出したい場合にはさらに後ろ、後退の合図を出したい場合にはもっと後ろというように、指示の内容によって指示を出す位置を変える必要があります。

脚扶助のメリット・デメリット

馬の脚扶助には、馬の前に進もうとする気持ちを高める効果があるため、より走ろうという精神状態に持っていきやすくなるというメリットがあります。一方で、脚扶助を使用しすぎると、馬が緊張したり不安になったりするため、ペースを崩してしまう可能性もあります。

また、馬のテンションが上がりすぎてしまった場合には、騎乗者の指示を聞くことができない状態になってしまうこともあるでしょう。合図の強さを細かく調整して、扶助を出しすぎないことも大切です。

まとめ

今回は、乗馬の基礎ともいえる扶助について、その種類ややり方をご紹介しました。馬と心を通わせるためには、それぞれの扶助を組み合わせながら、効果的に指示を伝えることが大切です。馬の様子や反応を注意深く観察しながら、その馬の性格や傾向を理解できるよう努めましょう。

静岡県賀茂郡にあります「天城ホースビレッジ」では、ビジターの方でも気軽に乗馬を楽しんでいただくことができます。マンツーマンのレッスンなので、馬の様子や騎乗者の経験値に合わせた扶助の方法を丁寧に指導いたします。本格的に乗馬をはじめてみたい方も、旅先で思い出づくりをしたいという方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。ご予約はホームページの予約システムより24時間空き状況の確認と予約の申し込みが可能です。